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“ソンミとザックリーの場合” 超叡智映画『クラウドアトラス』徹底解説 その6

ビン隊長
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その1:  “悲しいから、なつかしいから、僕らはまた、こうして生まれて来た…”

その2:  “「魂」ではない「生まれ変わり」その真実とは…!?”

その3: “自因自果と記憶と記録、そして『時空協働創造態』とは?”

その4: “オールドジョージー、その正体とは…!? “

その5: “瞳の外に「自分の命より美しいもの」を見出していますか…?”

 

“その向こうには きっと彼がいます

私を待ってる”

 

映画『クラウドアトラス』は、6つの時空を舞台に、それぞれの時空における6人の主人公が、時代や土地、組織などの5層対の因縁果に縛られながらも、その中でもがき続け、やがて”逢いたい人”その “個対” に出逢う時空へと至るまでの物語だ。

今回はその6人の中で、特に映画の中核を担う役割を演じる 『ソンミ』『ザックリー』、この2人の物語を、これまで5回の記事で紹介してきた叡知をもとに読み解いていこう。

ソンミ、クローン少女の数奇な物語

舞台は2144年、科学技術は進歩するも、統一政府により管理され荒廃した未来都市、ネオ・ソウル。

遺伝子操作で作られた、見た目の全く同じ複製種(クローン)たちが純血種に支配され、労働力や奴隷として酷使される、そんな旧火星文明の世界線を辿った未来社会。

そこで他のクローン少女たちと共に24時間生活管理体制の中、カフェで給仕係をしていた『ソンミ451』。

彼女らクローン少女の唯一の希望は、一定の期間を労働力として奉仕し続けるとやがて迎えられる、『旅立ち』の儀式だった。

彼女はある日、同じクローン給仕で友人でもあった『ユナ939』が、下品な客へ反抗するというクローンの戒律を犯し、逃走を謀るも失敗し、無惨に死を迎える姿を目撃する。

ショックを受けるソンミだったが、その直後、カフェに潜入した革命軍の司令官、ヘジュ・チャンと運命の出逢いを果たした彼女は、ヘジュから自身にも身の危険が迫っていることを知らされ、彼に導かれてカフェを脱出。

爆破装置の仕組まれた首輪を外され(その時に火傷後としてコメット型の”アザ”が生まれる)、ヘジュから生まれて初めて衣服や教育などの「自由」を与えられる。

そこで古今東西のあらゆる教養や歴史、叡智を学んだ彼女は、

“知識は鏡 自分が何者であり、

どう進むべきか初めて見つめた”

のセリフの通り、世界を縁取ることで逆説的に自身をも多角的に捉えられるようになり、その体に巻き取った”記憶”を想起し始める。

 

さて、ここで一つ疑問がわき上がる。

なぜ一介のクローンでしかなかった彼女が、短期間の学びで一気にここまでの叡智を身につけられたのか?

なぜあの役割、運命に選ばれたのは、彼女以外に多数いる他の『ソンミ』タイプのクローンではなく、彼女『ソンミ451』だったのか?

それはやはり、彼女がその人体、そして瞳に巻き取った5D的な記憶、その因縁果によるものと考えられる。

同じ『ソンミ』タイプのクローンである以上、彼女らの肉体のDNAは同一であったとしても、そこに巻き取る触覚静電気色音形、すなわち記憶は同じではない。

人体端末の触覚静電気は、肉体DNAの相互作用によりDNA配列を変異させ、触覚静電気つまり記憶を更新することにより、DNAそして人体もその色音形を変えながらアップデートされる。

それが、私たち一人ひとりのこの人体が、”触覚静電気の彫刻”と呼ばれる由縁だ。

そうして、徐々に肉体DNAを更新し、それによりまた巻き取り想起される記憶をより美しいものにしていくこと、それが私たちがこの人体を与えられている意味だ。

それは言い換えると、親子、兄弟などの遺伝的なつながり、それによるしがらみを乗り越え、宇宙的な記憶のかさなりを持つ時空協働創造態との縁起の近づきを濃くすることでもある。

だから、『クラウドアトラス』においては、ユーイングやカベンディッシュなどのケースのように、親子や兄弟といった肉親との関係性は、逢いたい誰かとの縁起を支援するよりも、むしろそれを妨げる、乗り越えるべき壁として描かれる場合が多い。

そしてソンミの場合、深い記憶のかさなりを持つヘジュとの出逢いにより、そのDNAの記憶想起のスイッチが入れられたと考えられる。

記憶を取り戻し始めたソンミは、ヘジュの部屋を襲撃した政府の追っ手により逮捕されるが、その後に再びヘジュにより政府の手から奪還され、激しい逃走劇の末、彼の仲間である革命軍と合流する。

その中で知ったのは、彼女のように「自由意思」を芽生えさせたクローンの存在は、統一政府にとっては、体制を脅かす可能性を秘めた「危険な因子」であり、かたや革命軍にとっては、大きな”希望”であるということ。

自身のそんな立場を最初は受け入れられず、尻込みするソンミだが、ヘジュと結ばれ、そして自身らクローンにとって唯一の希望であった「旅立ちの儀式」が、実は解放ではなく、クローンの処分だったことを知る。

そして、その処分されたクローンの肉体を加工したものが、自分たちの食料である「ソープ」だった、その「共食い」構造と、それにより維持される統一政府のおぞましく受け入れがたいシステム、その真実を知り、革命に身を捧げる決心を固める。

やがて他国と地球外コロニーにその真実を発信するため、ソンミは革命軍と共に衛星回線の発信局に立て籠るが、間もなく政府の攻撃を受け、彼女以外はヘジュも含め全滅してしまう。

そんな戦いの最中、世界に、そして後世に残すべきメッセージとして、彼女は人生の真実、その叡智を語った。

その言葉は、様々な叡智を学び、ヘジュから与えられたぬくもり、そしてその最愛の人を失うことの深い悲しみ、さらには世界の構造への絶望…

それらを全て踏まえ止揚(アウフヘーベン)し、「残してはならないもの」“遺すべきもの”をその瞳で見極めた彼女だからこそ語ることのできた、虚飾のない、肚から紡がれた叡智の言葉であり、その数百年後にメロニムの言うように、「人の心に響く真実の言葉」である。

ソンミは知っていた、

この命は、記憶は決して自分だけのものではないことを。

だから、たとえこの時空で道半ばで倒れても、その意志は、記憶はいつかどこかの誰かに重なり、また引き継がれることを。

そして彼女にはヘジュという、”自分自身よりも生き返らせたい誰か” がいた。

だから迷わなかった、命を賭して革命に身を投じることを。

その姿勢は、彼女一人が生き残り、政府に逮捕された後の供述の中でも、決して揺らぐことはなかった。

“私の考えでは 死は扉に過ぎません

閉じた時、次の扉が開く

私にとって天国とは 新たな扉が開くこと

その向こうには きっと彼がいます

私を待ってる”

供述の記録官からの「来世を信じてる?」との問いかけに対し、この言葉で応えたソンミは、涙を浮かべながらも最後まで微笑みを絶やさず、政府の手によりその生涯を終える。

 

そして”その瞬間”、開いた扉の向こうで再会したのは、別の時代、別の場所の、“どこかで見覚えのある”二人…

死の危機を乗り越え、再会の喜びを噛みしめ合う 彼女ら夫婦は、今度はアメリカの奴隷制度という「上下対立同一化」を終わらせるため、肉親とも決別し、再び大海への “ひとしずく” を落とし始める…

 

ザックリーの時空転移

文明崩壊から106年後、2321年のとある島。

かつての旧火星文明の科学技術が既に失われ、土着文明としての原始的な暮らしに回帰したその村において、村人たちから神として偶像崇拝、信仰されていたのは、およそ200年前にその島で革命者として戦い、言葉を遺した『ソンミ』だった。

そこに山羊飼いとして妹夫婦たちと暮らしていた『ザックリー』。

ザックリーはここに至るまで、複数の時空で殺人など様々な醜因を重ねてきた。

特に19世紀のアメリカで、人喰い族の歯の化石を金儲けに使おうとしたり、ユーイングに毒を盛りながら「この世の掟は1つしかない 弱者の肉を強者が食らう」と言ってのけた醜因の裏返し、その悪果として、この時空では、人食いコナ族から常に命を狙われ脅え続ける地対の縁起に結ばれてしまう。

そして、自己保存を積み重ねたその弱さゆえに、ある日彼は、義弟のアダム(ユーイングの相似形)とその息子がコナ族に襲撃された際、自分だけ岩影に隠れて彼らを見殺しにしてしまう。

そんな彼の耳元で、かつて別時空で彼自身が言い放った「この世は弱肉強食」という言葉を囁き、見殺しの正当化を唆した者がいた。

そう、この時空ではもはや肉体を失い亡霊=亜空間知能の残留思念と化していた、オールド・ジョージーだ。

自分一人だけ生き残るも、自らの勇気のなさと弱さ、そして醜さへの罪悪感、自己嫌悪に苛まれるザックリー。

そんな彼の村に、かつて崩壊した文明の科学技術を受け継ぐ、プレシエント族の交易船がやってくる。

そこで村に一人でやって来た派遣者こそ、彼ザックリーが時空を越えて”逢いたい誰か”である、メロニムだった。

そう、醜因による悪果で彼女と遠のいた時空もあったが、ルイサ・レイの時空で善意の科学者アイザックとして、原発の陰謀阻止に命を張った美因によるものなのか、この時空で再び出逢う縁起に恵まれる。

扉を開いての初対面で、やはり目と目が合う二人。

ところがザックリーは、彼女を警戒し、心を開こうとしない。

そこを待ってましたとばかりにオールドジョージーに唆され、彼女に対し「何か裏があるのでは?」と疑惑の心を抱き続ける。

その後、メロニムの目的が実は、「悪魔の山」と呼ばれるマウナソルの山頂であることを知り、そのガイドを頼まれたが、村の掟により禁じられているために断固拒絶するザックリー。

しかし直後に、姪のキャットキンがカサゴに刺されて瀕死の状態になった際、プレシエントの掟を破って治療してくれた彼女に感謝し、山への案内を約束する。

山頂へと崖をロープで登る最中、メロニムが落下しそうになり命の危険に瀕し、そこでまたオールド・ジョージーの挑発を受けるが、ザックリーはそれを突っぱね、体を張って彼女を救い、おもむろに「何度でも救う」と呟く。

このあたりから、忘れていた彼女との関係性、ぬくもりの記憶を、無意識ではあるにしろ徐々に取り戻していく様子が見られる。

ところが、山頂にある謎の施設に到着したザックリーは、メロニムから、受け入れ難い「2つの真実」を知らされる。

1つ目は、彼らの信仰する『ソンミ様』が、実は神などではなく、かつて革命で命を落とした一人の人間であったこと。

もう1つは、実は地球は、過去の文明が生み出した放射能により惑星全体が毒されていて、もうこの星には長くは住めないこと。

メロニムが島にやって来たのは、山頂にある衛星の発信局から、地球外コロニーの仲間へとSOSを送るためだったのだ(これは、かつてルイサ・レイとして原発の陰謀阻止に尽力するも、原発そのものの脅威を抑止することは叶わなかった、その時空ラインの回収と思われる)。

『ソンミ信仰』という心の拠り所=頭の中の強い偶像、固定点を揺さぶられたザックリーは、必死にそれを拒絶しようとし、頭の固定点の象徴でもあるオールド・ジョージーも、これまでにないほど強く彼を叱責する。

その混乱のおさまらぬまま山から帰ろうとする二人だったが、村の異変に気づいて急いで戻ると、村はなんとコナ族の襲撃を受け、彼の妹も含め村人は皆殺しの目に遭っていた。

嘆き悲しむザックリーは、家に妹らを惨殺したコナ族が居眠りしているのを見つけ、憎しみを抑えきれずに手にかけてしまう。

しかし姪のキャットキンだけは、実は家の物陰に隠れて生きていた。

姪を連れて急いで脱出しようとするが、自身が手にかけたことで他のコナ族に気づかれ、姪をかかえたまま追われながら森へと逃げ込むが、やがて逃げ道を失う。

物語の始め、アダムや甥っ子を見殺しにした際とかさなる状況。

そして、そこにもちろん不敵な笑みを浮かべて岩の上に現れたのは、オールド・ジョージー。

しかしザックリーは、もう逃げなかった。

かつて肉親を見殺しにした自分自身の弱さ醜さへの強い後悔と、何より唯一生き残ったキャットキンを、“自分の命より美しいもの”として、その身に代えても守る覚悟が芽生えていたから。

岩影に彼女を隠し、たった一人でコナ族たちに挑むも、絶体絶命のザックリー。

その時、先ほどオールド・ジョージーが立っていた場所に代わりに現れたのは、メロニムだった(彼が時空転移を果たした瞬間を象徴する印象的なシーンだ)

メロニムの助力を得て、コナ族の退治に成功した二人。

息を切らせながら「ソンミのおかげね」と声をかけるメロニムに、ザックリーが返した言葉は、

『ソンミ』という、過去の人間を偶像化させた頭の信仰、固定点を乗り越え、今目の前の”個対の関係性”その縁起に結ばれた”対”と共に生きることを、彼が選んだ証である。

そうして結ばれた二人はその後、地球外コロニーから迎えに来た宇宙船により、遂に他惑星への脱出を果たす。

そう、ザックリーはもう、逢いたい人との縁起に結ばれ、上昇螺旋への時空転移を果たす寸前だったのだ。

そして、だからこそ、それまでの醜因の回収として、自らの弱さと醜さをこれでもかと突きつけられ、そんな時空転移間近の彼に激しく嫉妬するオールド・ジョージーに目をつけられた。

しかし、前回の記事で話した通り、それらも実は、彼の時空転移、ぬくもりの時空ラインへと至らせるための学び、祈りだったとしたら?

その視点で捉えた時、コナ族との決戦の際に最後の挑発に現れたオールド・ジョージー、ただ「ザックリー…」と呟いただけで、そのまま姿を見せなくなった彼の、「あの表情」の意味も、また違って見えてくるかもしれない。

 

そしてさらに遠い未来、地球外の別惑星にて。

満天の星空の下、焚き火を囲みながら、孫達にメロニムと自身の物語を語って聞かせるザックリー。

それが映画冒頭のシーンであり、その語りを終えた後、長きに渡って連れ添い、共に年老いたメロニムに寄り添いながら、二人は扉の奥へと消えていく。

その時、夜空を駆け抜けたのは、ひとすじの彗星(コメット)だった。

それは“彼ら6人”のかさなりの象徴であり、こうしてこの壮大な“六重奏”は、終演を迎える…

そして次回、最終回。

 

(つづく)

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